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zoom RSS 奇蹟の画家 ★ 石井一男

<<   作成日時 : 2014/04/15 23:23   >>

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先月だったか、毎日新聞で神戸の画家・石井一男さんを紹介していた。

「清貧の画家」の表現に、「ああ、あの・・・・」と合点がいく。


何年か前、後藤正治著「奇蹟の画家」の紹介を新聞の書評欄で読んでいた。

そのあと、TV番組「情熱大陸」で紹介され、話題沸騰になったような。

立て続けに注目を浴びていた記憶がある。


稀有な人がいたものだと感心しつつも、

芸術家にドラマを求めて囃し立てる風潮に、どこかしら鼻白むようなところがあった。



通り過ぎてたはずの記憶のきれはしが、

流れの杭にひっかかっていた。



出合いには、そんなことがある。




新聞記事によれば____。

石井さんは現在、73歳。独り暮らし。

発掘された二十数年前のまま、住まい兼アトリエである長屋に住み、

ひと月6〜7万円ほどの生活ぶりだ。



朝6時起床。

掃除をして、手洗いで洗濯。

昨日の残り物で朝食を済ませると、6畳のアトリエで絵を描く。

昼になると近所の食堂で食事をして、

商店街で夕食の惣菜を買って帰るが、

惣菜が半額になる夕方に出かけることも。



そして、また絵を描く。

描きながらクラシックを聴く。

間に夕食をとって、ふたたび絵に向かう。

就寝は10時ごろ。

本を読んだり、落語を聞きながら眠りにつく。

何十年間、不動ともいえる石井さんの生活スタイル。



絵が売れるようになってアルバイトを辞めたので、

孤独の中で淡々と、絵だけをみつめる生活が続いている。



近影の写真が載っていた。

爽やかな清潔感のある面差しで、

小津安二郎の映画の雰囲気が漂う。

改めて、本を読みたくなった。



画像





「奇蹟の画家」は、画家・石井一男さんと画廊主・島田誠さんの出合いから始まる。

誰にも習うことなく、知られることもなく

ひっそりと描かれていた膨大な量の絵。

その絵が、

「女神像」と名付けられて

次から次へとひとびとの手にわたっていく。



著書は、石井さんと島田さんとの出合いのみならず、

絵を求めた人たちの「なぜ?」を追求したドキュメンタリーだった。




当時、石井さんは49歳で独身。

人と話すのが苦手で定職にもつかず、アルバイトに頼る暮らしだった。

たまの画廊めぐりと映画館の他には出歩かず、

訪ねてくる友人もいない。

ただ、中断していた絵を数年前から描き始めていた。



再び絵筆を握ったきっかけも石井さんらしい。

アルバイト生活で精神的にも肉体的にもまいっていた時だった。

偶然、通りすがりの母子の姿に目を奪われた。

無垢な赤ん坊の顔に光が満ちている。



そのとき、世界が違って見えた。

ゴミさえも美しく輝いて見える。



石井さんの希望の道しるべだった。




絵は、自分のために描いている。

人に見せようとは思わず、サインもない。


だが、体調が思わしくない日が続き、

どうしようもない、底知れぬ虚しさに襲われた。



描くことは生きていることの証し。

せめて、自分を納得させる確信がほしい。




その時、長年、神戸の海文堂書店社長を務め、

ギャラリー島田を営む島田誠さんのことが頭によぎった。



ギャラリーの通信で、島田さんが記す<蝙蝠のつぶやき>を読んでいた。

信濃デッサン館の 窪島誠一郎とも交流があり、

画廊で扱う絵には信念が感じられる。


「このひとなら、自分の絵をわかってくれるかもしれない」


人と話すことが苦手な石井さんが、

生涯で一度っきりの<売り込み電話>を掛けていた。



「絵を見ていただけませんか」

不意の電話だが、切実さだけは伝わる。

「まあ、一度、絵か資料でも見せてください」


あいまいな反応だったが、

翌日、石井さんはアルバイトで新聞を運ぶカートに絵を積み込み、

ギャラリー島田に向かっていた。

人一倍、内気な石井さんが・・・・である。



逢うべくして 逢う

そんな運命だった___としか言いようがない。

絵を見ながら、島田さんは「すごい!」と胸の芯を震わせた。



間をおかず、石井さんの初個展がギャラりー島田で開かれることになった。

ふしぎなことに、日ごろ画廊には足を運ばない人たちもやってきた。

女神像と対話するように足をとめ、熱心にながめていく。

名もなき画家の絵が、一点、また一点と売れていく。



想像以上の反響だった。

初個展で、石井さんには、百万円ほどの収入があったそうだ。



「見ていただいただけで、うれしいのです」

石井さんは、画廊の隅っこに腰掛け、

訪れてくれた一人ひとりの背中にお礼を言っていた。



「お金はいらないですから、例の芸術家基金に寄付したい」

個展が終わってから、石井さんが申し出た。

島田さんは、思わず言った。

「あの基金は、あなたのような人を助けるためにあるのですよ」



そんな、ひとなのだ。




絵を買った人を追いかけていくことは、

キャンバスの裏側に塗り込められたちからを探ることでもある。



死期を前にした男性が、

最期の一枚に石井さんの絵を選んで病室に飾った。



骨髄移植手術を受ける男性が、

女神像を手術室に持ち込んで見守ってもらった。



毎年、個展初日の朝に駆け込んできて、

<そのときの一枚>を選んでいく女性がいる。



かの有名なフランス料理店「ジャン・ムーラン」では、

鴨居玲や藤田嗣治と並んで石井作品が飾られており、

しばらく佇む人も少なくなかった。



女神とも菩薩とも呼ばれる「聖性」が、

絵だけで人の魂をつかむのかもしれない。




「うまい絵はゴマンとある。でも、この絵は、何かちがう」

事業家で建築家の新保哲也さんは、石井さんの作品を30点以上もっている。

売るためではない。

預かりものだと考えている。



絵そのものに魅了され、

長い年月をかけて眺め続けたいと思ったからだ。



偶然に知ったことだが、

きょうから福岡で石井さんの個展が開かれている。



  ___石井一男 展   女神たち___

会期:2014年4月15日(火)〜20日(日)

時間:11:00〜19:00  *最終日は17:00まで

会場:ギャラリー風 (福岡市中央区天神2-8-136 tel:092-711-1510)

画像




「石井さんの絵は、まだ野仏で菩薩ではない」

「歴史に残る絵なのかどうかは、わからない」


島田さんのことばだ。

「プロとして絵を売っているのだから、サインをした方がいい」

そうもアドバイスした。

しかし、石井さんは

「私の絵は、土に還ればいい」と絵の裏に名前を書くにとどめている。



寡黙なひとらしい。


絵について尋ねても

「う〜〜〜ん、なんとなく〜。う〜〜〜ん・・・・」となる。


ことばはいらない。

絵にすべてがあるのだろう。




ただ、一緒にいると、

会話がないのに気詰まりはなく、清々しさが残るそうだ。


森林浴のあとの浄化した心地にちかいような。

それは、絵からうける印象そのものなのかもしれない。


求めてこその<であい>

そんな気がする。











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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
これまた不思議な、ヘンリー・ダーガーみたいな方がいらっしゃったのですね。ダーガーと違って早めに見つけてもらえてよかったのかわるかったのか? 見に行きたいけど福岡っすか…。また銀座あたりに来ませんかね? 潜入レポートしてきますよ。
あ、そうそう明日は京都へ今春最後の桜を追いかけに行きます。
少佐
2014/04/16 21:33
少佐さん

ときどきお邪魔して、妖しい花をのぞいてますよ。
桜、楽しみです。
わが家のベランダから見る桜だけ、他よりはやくて葉が茂ってます。

ヘンリー・ダーガーって人がいたんですね、さっき、調べたとこ。
石井一男展、東京の画廊でやったばかりみたいです。
次回はお知らせしますので、ぜひレポートを!
不動のままでいてほしいなあ。

七海
2014/04/16 23:02
もちろんしらない画家でもあり、絵も観たことがありません。当たり前ですが、月並みではない、何か深いものを感じます。どこでどうつながっているのか、七海さんの心にも共通するものがきっとあるのでしょうね。私とは別次元の世界を生きておられ、作品作りをなさっている方です。また一つガンと殴られた思いがします。
茜雲
2014/04/20 10:02
茜雲さん

石井さん出現の翌年、阪神大震災があったそうです。
肉親を亡くしたりして、
心に傷を負ったひとたちが絵に魅せられたとも聞きます。
何としても、原画を見てみたい気がします。

>ガンと殴られた思い
剣道の達人が書いてました。
相手の強さを感じられるのは、
自分の上達範疇内までだって。
うらやましい反応だと思いました。

七海
2014/04/20 12:43
興味深く読みました。
神さまからの贈り物はいろいろな形であるのかもしれないと思いました。
石井さんの能力もそうかもしれないし、石井さん自身が他の人への贈り物かもしれません。
物質的な価値観からすると決して幸せではなかったと思うけど、
本当の意味で幸せな人だと思います。
峰猫
URL
2014/04/22 22:59
峰猫さん

石井さんは純粋な人なのだろうと思います。
でも、一徹というか頑固でもあるわけで、
発掘されたというけれど、
石井さんが島田さんを選んだことが始まりだもの。
決して、受け身のひとではない。
受け身に見えるとこがすごいなと思っちゃった。
七海
2014/04/23 15:23

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