どれみふぁ/○○/からの詩

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zoom RSS 終わらない手紙

<<   作成日時 : 2015/03/09 01:06   >>

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サイダー色の空に 手紙を書いてます





ありがとう

あいしてる




ありがとう

しあわせだった




ありがとう

毎日が満ち足りていた





ありがとう

わたし

百分の一でも  返していた?







晴れた日が続かない

わがままな わたしだったね

ごめんなさい




あなたの顔が曇って

戸惑った様子で

わたしを見つめた あの時間



いまは

そのことばかりを

繰り返し

繰り返し

繰り返し

謝っています




でも

あなたの ことばに救われていました




どんなことがあろうと

何を言われようが


君をいやだと思ったことなど

一度も

一瞬たりとも

ないよ




ありがとう

ほんとうに ありがとう





あなたが  空にのぼった夜


ちいさな骨壺の中で

かちっと澄んだ音がしました

胸がふるえました



ちょうど

泣きはらした目で

友人のメールを読んでいた時だったから



ひとりじゃない


あなたは いる


はっきりと 人あかりを 感じたの



最後の最後まで

ありがとう





ほんとは

リハビリに励めるだけの からだではなかったね




熱風にさらされ

かたちを崩した骨を見たとき

胸をえぐられる思いがした



わたし

なんて酷なことをしていたんだろう





「帰りたい」

「こんなリハビリなんて 無意味や」

「好きなものを食べて それで死ぬなら本望」

「静かに暮らしたい」



あなたのわがまま


勝手に言いきって

リハビリに励むことばかりを望んでいた


だって

確実に元気になっていたんだもの

ひょっとすると歩ける・・・・

それだけを願っていた




だけど違った

あなたは もう

生活のかたちを 望んではいなかった

静かに消えていく場を 求めていただけ





リハビリ回復は

わたしのエゴでしかなかった




腕時計を交換して

わたしの手首を見ながら

「僕の形見だな」とつぶやいたっけ


あのときは

笑い飛ばしたけど

あなたは すでに

別のレールを走り出していた・・・・・





ストレスからか

無表情になっていくあなたを見て

病院側が 「特例ですが・・・・」と

差し入れの許可を出してくれた



トロミ付きのお茶をまずそうにするので

ジュースを日替わりで持参

ローマに行くとき機内で食べていた

<おばあちゃんのぽたぽた焼き>も預けておいた



夕食を終えたばかりなのに

「お腹がすいた。 おい、ぽたぽた焼きを盗んで来いよ」

駄々っ子ぶりが可笑しかった




夕食時どきの一品持参も許された

カレー ポテトサラダ 鳥の照り焼き 卵焼きなど

病院食も残さなくなり

みるみる精気が戻ってきたね


「元気になられたねぇ」

顔を合わせる人が、嬉しそうに声をかけてくれた



そう

すべてが順調だった



病院スタッフも

顔馴染みになった人も

覗きにきた知り合いも

みんなで 拍手喝采していたんだよ




「退院したら、ふたりでべったり過ごそうね」


そう言うと

穏やかな顔のまま こくんと頷いた



毎日の定期便ではなく

ひょいと面会に行った時など

顔がぱあ〜っと晴れあがったのを覚えている



「三月いっぱいで仕事をやめるね」

「そう早まるな・・・・」

「そしたら、毎日、何度も逢えるじゃない」

「・・・・・・・」


喜んでくれたと思っていたけど、

あのとき、複雑な表情で黙り込んだ気もする



帰り際、 ベッドのからだに抱きつけば

「おい、よせよ」と

以前の機嫌がよいときの口癖が出たけれど



「ああ、この手と足が戻ったらな・・・」

「大丈夫、歩けるようになるって」

「そうじゃない、元に戻ったらなあ〜」


気安く励ましていたものだね

あなたの内部では

葛藤と諦観しかなかったのかも


励ます人って

やっぱり 他人事だもんね



わたし

ちっとも  あなたに寄り添えていなかった





三日の夜

「じゃあ、また明日ね」

そう言って病室を去った


その後の巡回で

看護師さんたちは 短かい会話を交わしてる


12時頃

わたしは 病院の着替えの服に刺繍をしていたんだよ

花を持った女の子に

手を振る紳士

そこに一匹の犬を追加


あした見せようと ほくそえみながら



同じ頃

あなたは 静かに眠って

ちゃんと呼吸をしていたそうだ


そして

次の巡回で 心肺停止を発見


二度と 目を覚まさなかった




三月四日 3時25分死亡

心不全

原因不明



渡された診断書を睨みつけても

奇蹟は起きなかった







「どうせなら、何も分からない方がラクだったなあ」

いつか

つぶやいた言葉が忘れられない



自分のからだのことは

自分で分かるとも言った



ひょっとして

潔い別れに向けて 頑張ってたの?



故障だらけのからだに鞭うって

しんどかったろうに・・・・・

今更にして 胸が痛い




期待する私のために

精一杯の元気を見せて

ぽきっと折れてしまったにちがいない



「あなたの心労を思って性急すぎたね」

「介護される姿を見せたくなかった、させたくなかった」

「あなたのためを思った最高の別れ方じゃない」



友人のメールに励まされ、涙が止まらなかった


わたしって・・・・・幸せ者




ちいさな骨壺は 素焼きのせいか

両手で握りしめると

じわっと熱を帯びてくる

しっとり濡れた手形が返事のようにも思え

毎日の挨拶になってきた




脳梗塞で倒れて三ヶ月半

この時間は

わたしが立ち直れるのを見据えるため?


わたしが<介護の覚悟>を決めたとたん

あなたは パッと飛び立った


ほんとは

まだ信じられないの


家中をうろつきながら

「出てきて!」と叫ぶ夜がある


衣類に顔をうずめ

あなたの気配を抱きしめたり




カッコよすぎやしない?


わたしまた

恋をしそうだ





ありがとう・・・・・・英児




追)

あのね・・・・・・

明け方、骨壺がチン!と音を立てたの

なんて言ったんだろう





























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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
震えながら読ませていただきました。うまく言えないですが、
終わらない手紙、いつまでもいつまでも書き続けて欲しい、なんて思いました。
とうい
2015/03/09 23:11
とういさん

ありがとう
肉声を聞いたような気がします
ひょっとして代返してくれました・・・・
七海
2015/03/11 19:14
最初のありがとうのフレーズ、こんな言葉が私の最期に発することが出来たらどんなにいいだろう、心では思っても口に出てこないだろうな、そう思って読み始めました。

ところが、私の読み間違いではないかと思えるくだりにびっくりしました。

読み終わって今でも私の読み間違いだと言い聞かせています。
茜雲
2015/03/12 08:18
七海さん、年取って来ると涙腺も緩むんですね。
だめだって、こういうのは…。
これ、ほんとのことでしょ?
これが創作とか言われると、めちゃくちゃ情けなくなるのですが…。
ごろー
2015/03/12 10:43
とてもとても残念です。
ぷつーんと糸が切れたタコのようにどんでいってしまいましたね。
七海さんの思いが、天まで届きますように!
どろっぷす
2015/03/12 20:46
茜雲さん

ごろーさん

どろっぷすさん

桂子さん

お声掛けしてくださって有難うございます

ブログなどには、全く興味を示さなかった夫でしたから
「私が先に死んだら、遺言だと思って読んでね」
と話しておりました。
でも、「読んでみるかな」と言ったきりで終わりでした。
だから、直後の気持ちをここに示しておきたいと・・・。

思いがけず、読んで言葉を残してくださる方があり、
驚くと同時に、救われる気がしたものです。
うれしく思いました。

悲しみから哀しみへ
今はそんな移ろいを感じています。

お一人ずつに感謝しています。
七海
2015/03/14 12:58

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